社会や音楽etcについて
少子高齢化が日本社会の未来にとって非常に大きな影響を及ぼすことが話題となっている。そこで、少子化の実態を見るべく人口の年齢分布を眺めてみた。私は人口問題の専門家ではないが、人口の動態を見て驚いた。そこで、素人の私が人口について分析を試みた。
まず始めに、総務省統計局が公表した2013年10月時点の日本の年齢別の人口データを図1に示す。この図は統計局の数値データを基に私が作成し、注釈を入れてある。2014年末の時点で、実年齢は図中の年齢よりも1歳高いことに注意して頂きたい。
図1 年齢別の人口 http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2013np/ |
図1を眺めて気付いた幾つかの事項を以下に記す。
64,65歳を頂点とするピークが団塊の世代である。これは終戦後のベビーブームで生まれた世代。67歳のところで急激な落ち込みがあり、その右側に70歳を頂点とする山が見える。これは1945年の終戦の前後に生まれた世代である。
団塊世代から生まれた世代を2次団塊世代と呼ぶことにする。2次団塊世代の分布は40歳を頂点とする山として見える。この山の幅が64,65歳を頂点とする山よりもずっと広い。このため、70歳を頂点とする小さな山も団塊世代に入れた方が合理的である。このことを明らかにするために補助波線を図に付加した。この定義に対しては異論があるかもしれないが。
2次団塊世代の山の頂点(40歳)は団塊世代の頂点よりも10%ほど低いが、山の幅は広い。従って、大雑把に言えば、団塊世代の人口と2次団塊世代の人口はほぼ同じである。この事実は男女2人あたり2人の子供が生まれていたことを指す。
出産年齢は20歳代から30歳代まで広い幅がある。団塊世代の人口分布には山状に広がりがあるため、2次団塊世代の年齢分布が団塊世代の分布よりも広くなるのは自然である。
2次団塊世代の山裾は左側に減少を続けている。注意して見ると、28〜30歳の位置にかすかな膨らみが見える。他方、団塊世代の山が左側に底をうち、54歳を頂点とする小さな山が見える。この小さな山の人達から生まれた世代が28〜30歳の膨らみに対応していると考えることができる。
もし、団塊世代から2次団塊世代が生まれたことと同じことが2次団塊世代に起きるならば、すなわち世代の再生産が起きているならば、40歳から20歳〜30歳くらい年齢が下がった位置に3次団塊世代の大きな山が生じるはずである。しかし、現実はそうなっていない。大きな山ではなく、10〜20歳のところに小さな膨らみが見えるだけである。
すなわち、2次団塊世代から3次団塊世代への順調な再生産は行われなかった。青色破線で示す山は幻の3次団塊世代の分布である。
このような事態になった原因を考えてみよう。
1992年にバブルが崩壊した前後に、労働者を取り巻く環境が大きく変化した。変化の基になる2つの法律が1986年に施行された。それは、男女雇用機会均等法と労働者派遣法である。前者の法律によって男性と同じ過酷な長時間労働をする女性が増加した。後者の法律は正社員よりも低賃金で働く派遣労働者、すなわち貧困層を生み出した。経済的に余裕のない人は結婚することをためらい、独身を通すことになるであろう。
単純な想像をすれば、早く学校教育を終えた人は社会人となる年齢が若く、結婚年齢も若いと思われる。その反対に、高学歴の人は遅れて社会人となり、晩婚に繋がると考えられる。晩婚は出生数の減少に繋がる。
高学歴の指標として大学進学率に注目してみよう。総務省統計局が公表している大学進学率の推移(1954-2014)の数値をグラフとして表したものが図2である。ここでの大学進学率には短大進学率は含まれていない。
2013年に64、65歳の団塊世代の人が大学入学年齢の18歳になったのは1967、1968年である。その年代の大学進学率は13%である。次に、2次団塊世代の人が大学入学年齢となったのは1991年であり、その年の進学率は2倍の26%である。しかし、大学に進学しなかった人の比率、すなわち非大学進学率に注目すれば、87%から74%に減少しただけであり、大多数の人が大学に入学しなかったことに変わりはないと言える。
以上のことから、高学歴の人が少し増えたことを理由にして、その世代全体の晩婚化を説明することは難しい。
図2 大学進学率の推移 http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001015843 |
経済成長を達成し、経済的に豊な国となった先進国では社会のあり方が多様化している。これによって、離婚や未婚が増えている。離婚率は国の先進度を表すかもしれない。豊になると個人の生き方を重視することが可能となり、他人から制約を受けないライフスタイルを選ぶ。その延長線上には子孫としての子供を持つ動機が薄れるのかもしれない。
昔は結婚適齢期という言葉が生きていた。結婚を促す見合い制度が機能していた。これらが背景となって若者は配偶者を決めることができた。しかし、現在は結婚紹介所、合コン、婚活などを経て結婚相手を見つけることが増えているようだ。この場合、自分からその場に参加しなければ相手と出会うことはできない。昔は外から結婚話がやってきたのに。
未婚率の統計データが内閣府から公表されている。図3は生涯未婚率の推移である。上段の図を見ると未婚率は男女とも平成に入ってから急増している。高度経済成長が終焉すると日本社会の何かが変化し、それが未婚化を促している。
下段の図は教育別の未婚率を示す。女性(左側)の場合、教育歴による影響はほとんどなく、時代の進行につれて未婚率は上昇している。男性(右側)では、教育歴の影響が現れている。上の(7)で高学歴について述べた予想に反して、高学歴になるほど未婚率は低い。教育歴とは関係なく時代の進行につれて未婚率は上昇。
注目すべきは小学校・中学校グループの男性の未婚率が極めて高いことである。これは、教育歴の低い男性は高賃金の職につくことが難しく、女性から結婚相手として認めてもらうことが難しいからではないか。経済格差が未婚率に反映されていると考えられる。
図3 生涯未婚率の推移 http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h25/ zentai/html/zuhyo/zuhyo01-00-20.html |
重機械メーカーのコマツが興味深いデータを示している。コマツは本社を東京に置くが、主要な工場は石川県、大阪、北関東にある。コマツの既婚女性社員の子供の平均数が興味深い。
表1 コマツの既婚女性社員の子供の平均数 |
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子供の平均数 |
既婚率(%) |
東京本社 |
0.7 |
52 |
大阪・北関東 |
1.3 〜 1.5 |
|
石川 |
1.9 |
91 |
石川の女性管理者 |
2.6 |
|
石川の事業所に勤務する女性の子供の平均数は1.9人であり、管理職は更に多い2.6人である。しかも石川では既婚率が91%と非常に高い。
上はコマツという特殊な例かもしれないが、そこから「東京は子育てがしにくい都市」であることが示唆される。その理由を以下に並べてみた。
通勤時間が長い
住空間が狭い
子供の面倒を見てくれる両親が近くにいない
保育施設が足りない
結婚相手を見つけにくい
生活コストが高い
慌ただしい
リラックスしにくい
少子化を止めるには何をすればよいのだろうか?自分なりに考えた事項を挙げてみる。
アベノミクスは富裕層がもっと豊になれば、貧困層へのおこぼれが増え、貧困層が恵まれるであろうと喧伝されている。いわゆる富のトリクルダウンである。しかし、これは起きないであろう。アベノミクスを放置すれば富裕層と貧困層の二極化はさらに進み、少子化が増幅される、と考える。
何故か、日本では長時間働くことは勤勉であり、それが美徳とされている。そのせいで、多くの労働者は長時間の勤務をこなすけれども、職場に滞在する時間が長いだけという側面もある。意味の無い勤務を止め、実のある勤務に集中することを評価するべき。
勤労コストを削減するために非正規社員を増やし、正社員を長時間働かせる仕組みは日本社会を貧困にするであろう。この仕組みではイノベーションは生まれないし、子供も生まれない。
中学卒男性の未婚率が非常に高いことから、義務教育の期間を18歳まで延長する。普通高校の他に職業教育に特化した職業高校を新設する。
職業高校では、近代的な職業に必要なスキルを教育する。
例えば、建設重機の操作、コンピュータ技術、ゲームソフト、3Dプリンター操作、数値制御工作機械操作、大工技術など
群れないメンタリティを涵養する教育をする。自分で考え、行動する、独立した個人を作る教育を進める。これはグローバル社会にも通用する。
この意味で、東京でオリンピックを開催することはマイナス。東京一極集中は日本の常識かもしれないが世界の非常識である。例えば、自然災害に対するセキュリティの観点かあらも集中はまずい。
人口推計(平成25年10月1日現在 e-Stat 総務省統計局のホームページ http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2013np/ |
大学進学率の統計 e-Stat 総務省統計局のホームページ http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001015843 |
生涯未婚率の推移 内閣府男女共同参画局 zuhyo01-00-20.html |
コマツ:社内の既婚女性の子供の平均数 http://kivitasu.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/http.html |